業界研究シリーズ➂ 百貨店業界 ~百貨店ビジネスを分かりやすく説明~

 

みなさんこんにちは。

 

ダダオ&シャオムです。

本日は業界研究シリーズ第3弾です! 

 

今回取り上げる業界は、百貨店業界です。

 

私たちの生活にも馴染みがある百貨店ですが、その百貨店のビジネスに関して、

あんまり知らない方も多いのではないでしょうか?

 

百貨店業界の概要について、分かりやすくまとめていきたいと思います。

 

 

定義: 百貨店ってそもそも何?

 

まずは、百貨店の定義の話です。

そもそも百貨店とは何なのかって意外に知らないですよね。私たちもこの業界研究をす

るまでは、正確な定義は知りませんでした。

  

経済産業省の商業統計によれば、

①従業員50人以上の商業事業所で、②衣食住の商品群の各販売額が小売販売総額の10%

以上70%未満であり、③セルフ方式店に該当しない(=対面販売の割合が高い) 商店が百貨店に分類されます。

(参考: http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2/h16/pdf/niji/riyou-gyou.pdf)

 

一言でまとめると、百貨店とは、衣料品、食品、雑貨などを幅広く取り扱っていて、か

つ対面販売がメインの比較的大きいお店、といった感じです。

 

上記の定義を参考に、百貨店と百貨店に似ているお店を比較すると、よりイメージが沸

くかと思います。

 

一般のスーパーとの違い:

 一般のスーパーはだいたいが対面販売ではなく、セルフ方式店です。なかには試食販売

をしているスーパーもありますが、普通はセルフですよね。

この野菜どうですか?とかこの肉買いませんか?みたいな販売担当の人は、

近所のスーパーではそう見かけないですよね(笑)

 

ショッピングセンター(SC)との違い:

SCはあくまでデベロッパー主体の不動産業です。

基本的には場所貸しのみなので、百貨店のように“仕入れ”は行いません。

また、百貨店では百貨店の社員が店員としてモノを売っていることが多いです。

一方、不動産業のSCでは、SC側の店員は存在せず、販売は基本メーカー側の人間が行っています。

 

ららぽーとの中の洋服屋さんの店員が、三井不動産の社員というのはありえなそうです(笑)

でも高島屋の中の洋服屋さんでは、店員が高島屋の社員ということは十分あり得ます。

 

 

百貨店の職種について

 

百貨店には、様々な職種が存在します。

 

販売(販売、マネージャー)

担当する売り場で接客、商品の販売、発注、在庫管理、伝票処理などを行います。また、販売スタッフへの教育や売場全体のマネジメントなども行います。

 

仕入・物流(バイヤー)

いわゆるバイヤーと呼ばれる仕事です。商品の選定から、仕入れ、新規仕入れルートの開拓などを行います。売れる商品をいかに仕入れるかがとても大切です。

 

販売支援(販売促進、店舗企画)

より多くの集客のため、イベント、物産展などの企画、運営を行います。また、フロア全体としての商品展開をまとめ、より機能的で売れやすい売場を作ります。

 

営業(外商営業、法人営業)

外商営業とは多額の購入をする個人や法人に対して、店舗外で直接顧客宅を訪問して商品を販売する仕事です。

 

その他にも一般職の人事、総務、経理財務などの職種も存在します。

 

(参考:百貨店業界の職種と仕事内容について-業界動向サーチ

 

 

 

百貨店のビジネス(収益)モデル: 一体どうやって儲けているのか

まずは、実際の高島屋の例を見てみましょう。

 

f:id:honmadesukate:20190301134431p:plain

株式会社高島屋 有価証券報告書 (2018年 2月期) 営業収益 (セグメント情報)(https://www.takashimaya.co.jp/base/corp/ir/syouken/pdf/15204.pdf)

 

ご覧の通り、百貨店のビジネスモデルは大きく4つに分類できます。 

 

1. 百貨店業(小売)

    百貨店といえばまず小売りですね。

    衣料品、食品、雑貨など、お店で売ってる商品が売れるだけ儲かります。

  (※ 利益=営業収益-仕入れ値です。営業収益=利益ではありません)

 

2. 不動産業

  店内の一部テナントをメーカー等に貸し出すことで、その賃料を取っています。

  ex) 大丸の中にユニクロが入っている。

     この場合、ユニクロは賃料を大丸側に支払っています。

 

3. 金融業

        百貨店はオリジナルのクレジットカードを発行しています。

        その年会費などで儲けを得ています。

 

4. 建装業

      お店の内装などをデザイン、建装します。

 

※ちなみにですが、営業利益だけでみると百貨店業が稼いでいるように見えますが、こ

 れは売上です。売上からコスト引いた利益で換算すると、下記になります。

f:id:honmadesukate:20190301135235p:plain

(https://www.takashimaya.co.jp/base/corp/ir/syouken/pdf/15204.pdf)

 

こうみると、不動産業がいかに利益率が高いかが一目瞭然ですね!

 

百貨店の仕入れ方法について

ここで、百貨店ならではの特徴について少し触れたいと思います。

 

それは、仕入れの仕組みです。

 

百貨店業は、“モノ”をメーカーなり卸から仕入れて店頭で売るわけですが、実は仕入

れの方法が3つあります。

 

突き詰めると結構複雑なのですが、あくまで概要だけ書きたいと思います。

 

1. 完全買取

 

これは一般的な仕入れの方法です。

百貨店がある品物を10個メーカーから仕入れるとします。

百貨店は仕入れのお金をメーカーに支払い、10個の品物を買い取る。

ポイントは、1) 売れ残りのリスク(在庫リスク)と 2) 品物の管理リスク(仕入れか消費

者が購入するまでの管理)を百貨店が背負うことです。

 

10個仕入れたのに、6 個しか売れなかったとしても、支払った10個分のお金は返ってき

ません。また、完全に買い取ってるのでいくらで売るかは百貨店が決められます。

 

2. 消化買取

 

消化仕入は、店が売上げた時点で仕入れが起きる仕組み(売上仕入れ)です。

百貨店は商品が売れた分だけの仕入れ金額をメーカー等に支払います。

商品の所有権は売れるまで、メーカー側にありますので、売れ残ってしまった場合は返

品が可能です。

ポイントは、完全買い取りと異なり、在庫リスクが百貨店ではなく、メーカー側にあるということです。

上の例でいくと、10個中6個売れた場合、百貨店は6個だけ仕入れたことになり、6個分

仕入れのみをメーカーに払います。

 

売れたら仕入が立つため、この品物が人気が出て売れるのだろうか、前もって仕入れて

おいてよいのだろうかという不安が解消される販売形態ですね。

 

3. 委託買取

 

これはほぼ消化仕入れと同じです。

こちらも、在庫リスクがメーカーにあります。ですので、百貨店側は売れた分だけを仕入れとして支払います。

消化と委託との違いは、売れ残りの商品をどう認識しているかです。あくまで計上面の話ですね。

 

10個仕入れて、6個仕入れたとします。4つが売れ残りになります。

 委託の場合: 「10個仕入れたが、6個しか売れなかったので、4つを返品=結果6個分の 

                         仕入れ代金を払った」

 消化の場合:「6個売れたので、6個仕入れたことになった。=結果、6個分の仕入れ代金

                       を払った」

 

つまり、委託の場合、仕入先から店舗に商品が納品された時点で仮仕入れとして処理

をします。しかし、消化の場合納品されても、何の処理をしません。

 だから上の例ですと、「10個仕入れたが」の有無がそれを表現しています。もちろん

 結果は6個分の支払いで同じです。

 

(参考: 買取仕入れ/消化仕入/委託仕入方法。店舗やメーカーの3つの基礎 – landgather

 

四季報業界地図: 百貨店の動向

 

・百貨店は大きく苦戦

 

結構有名だった松坂屋銀座店の閉店など、百貨店の閉店は後を絶ちません。

 

その要因は、収益モデルの核である、百貨店業(小売)が儲からなくなっていることにあります。

 

その理由は、大きく2つあります。

  1. 日本人の消費が落ちてる
  2. e-commerceの存在

 

モノ消費から、コト消費へ。この言葉のままですが、モノにたくさんお金を使っていた

90年代や2000年の最初に比べ、近年モノへの消費は落ち込んでいます。

それに加え、e-commerceによってモノを買う際はネットを利用する人が多くなって、

わざわざ百貨店に行くまでもなくなりました。

そもそもモノを買う量が減っているうえに、新たな買う方法の出現、この2つは百貨店

に大きなダメージを与えています。

 

・訪日外国人が主な顧客

 

もはや百貨店を支えているのは日本人ではなく、日本を訪れている外国な方々です。化粧品や雑貨、ブランド品を中心に多くの買い物をしてくれます。

全体の動向に反し、大阪の百貨店の売上の調子が良いのは、関西国際空港におけるLCC(格安航空)の充実により、訪日客が増えたことが大きな要因なようです。

 

 

・脱却の流れは大きく2つ

 

この状況を打破するため、近年百貨店は方向性を変えつつあります。

その方向性は大きく分けて、2つ存在します。

 

1. 不動産業へ

 

一つ目は不動産業です。

もはや百貨店としてモノは売りません。売り場を専門店に貸し出し、賃料で収益を安定させていくことを目指します。

実例として、Jフロント・リテイリング(大丸・松坂屋)は、2017年松坂屋銀座店跡地

に“ギンザシックス”という商業施設をオープンしました。この中にはブランド店をはじ

め、様々なお店が入っています。

 

様々なお店の“箱”として生き残っていくことになりますが、百貨店のブランドが消えて

しまうのは、当事者にしてみればきっと苦しい決断ですね。

 

2. 自主編成売り場の拡充

 

これは単にモノを売るだけでなく、お店オリジナルの価値を出していくことを目指しま

す。期間限定のイベントや百貨店オリジナルセレクトショップなど、

「他ではなくこの百貨店に行きたい「この百貨店で買いたい」といかに思ってもらえ

るか。ブランディングマーケティング戦略が鍵となります。

 

最後にちょこっと百貨店の歴史を

 

結構文章量が多くなってしまったので、歴史にちょっとだけ触れたいと思います。

 

百貨店は呉服屋系と電鉄系の2種類が存在しますが、その起源は、呉服屋にあります。

 

時は江戸時代の呉服屋にまで遡ります。

呉服屋は和服の販売を行っていた商業事業者です。江戸時代全盛期には結構儲かってい

た呉服屋ですが、幕末から明治期にかけて営業不振に陥ります。そこで、

 

「商業を回復させるため、呉服屋は和服だけではなくいろいろな商品を売り始めること

 にしよう

 

これがざっくり言うと、百貨店の発端になります。

1905年三越呉服店 は、「デパートメント宣言」を発表。和服だけの呉服店から、様々

な商品を取り扱う百貨店へと姿を変えました。

 

この背景には明治初期の近代化の流れがあります。当時のアメリカにはすでにデパート

メントが存在していました。様々な商品が陳列された画期的なデパートは、日本人の目

にはかしく見えたことでしょう。経営が苦しくなった呉服店は、アメリカのデパートを

模倣する形で誕生しました。

 

三越高島屋松坂屋などは、もとは呉服屋です。

 

この呉服系の百貨店の後をおいかけるように、電鉄系(東急、東武、阪急など)の百貨

店が誕生します。中心の駅は土地があるうえに、人が多く集まりますので、百貨店事業

には良さげですよね。

 

呉服屋がアメリカのデパートを模倣し百貨店を日本に生み出し、電鉄系も地の利を活か

してそれに参画した、というわけですね!

(参考: https://piles-garage.com/article/5046)

 

 

 

以上、百貨店業界の概要になります!!

ご一読、ありがとうございました!

 

今回百貨店業界について調べて、理解を深めたことで、とっても百貨店に行きたくなりました(笑) 

 

この記事を読んでくださった読者のみなさんも、ぜひこの情報を踏まえて百貨店を訪れ

てみてください!

売り場の雰囲気や入ってるお店、またオリジナルな企画など、勉強したからこそ、見え

るものがあるかもしれないですね!

 

次回は、飲料・乳業業界について書いていきたいと思います!

 

それでは、またお会いしましょう!

 

ダダオ&シャオム

f:id:honmadesukate:20200710151723j:plain