業界研究シリーズ④: 飲料業界の概要とビジネスモデルを分かりやすく解説
みなさんこんにちは。ダダオとシャオムです。
少し時間が空いてしまいましたが、業界研究シリーズ第4弾です!!
今回取り上げる業界は、飲料/乳業業界!
私たちの生活において、飲み物はとっても身近なものですね。
皆さんはお気に入りの商品とかありますか?
今日はそんな飲料業界の仕組みやビジネスモデル、全体像について、
分かりやすく書いていきたいと思います。
飲料の定義
まずそもそも、飲み物とはなんぞや?という前提の話です。
一般に、涼飲料水には様々な定義はありますが、ここでは食品衛生法による定義を紹介します。
清涼飲料水とは、乳酸菌飲料と乳及び乳製品を除く、アルコール分1%未満の飲料のことを指します。
(https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/foodstandard_seiryoinryosui.html)
具体的には、炭酸飲料、コーヒー飲料、ミネラルウォーター類、茶系飲料、
果実飲料、スポーツ飲料、野菜飲料、豆乳類、乳性飲料、エナジードリンクなどです。
ポイントは、アルコールや牛乳などの乳製品は清涼飲料に該当しません。
飲料業界を考える時、清涼飲料水とアルコール類をセットで考えているインターネット
サイトなどもありますが、本記事は「会社四季報」業界地図を参考に、清涼飲料と酒類
は業界を分けて考えていきたいと思います。
本記事では、清涼飲料水を飲料業界と捉えていることに留意してください。酒類はまた今後の記事で書いていきますね。
飲料業のビジネスモデルと仕組み
コンビニや自販機、あるいはサイゼリヤのドリンクバーなどなど、、
飲料商品は私たちはとっても身近なものですよね!
でも実際に商品が店頭に並ぶまでには、たくさんのプロセスがあり、また様々な人や会
社が関わっています。
まずは飲料商品が、どんなプロセスを経て店頭に並ぶのかを考えていくことにします。
大局的な視点を持つことで、飲料業の全体像を把握していきましょう!
<飲料商品の商流>
飲料メーカーの商品が完成しお店に並ぶまでには、ざっくり言うと以下のような流れが存在します。
研究&開発&マーケティング→原材料調達→生産&品質管理
→ロジスティックス(商品が工場から倉庫へ)→店頭へ
まず一番最初のステップは、商品開発です。そもそもどんな商品が売れるのか、どんな
飲み物を作るか、どんな味にするかなど、商品開発と研究が行われます。
具体的な商品が決まれば、それに必要な原材料を調達します。そして、工場で実際に商
品が生産され、工場からメーカーの各地倉庫へと完成品が運ばれていきます。
これで販売への準備完了ですね!
ここから、商品が店頭に運ばれ、やっと私たちが実際に飲み物を見かけるお店の光景に
なるわけです。
ここで付け足し!
上のプロセスでは、生産された商品が倉庫からお店に運ばれると書きました。
実は、メーカーからコンビニやスーパーなどのお店に直接ではなく、間に異なる会社を
仲介するケースが多くあります。
その場合は、飲料メーカー⇒販売会社⇒飲料・食品卸⇒小売店⇒消費者
という流れになります。この一般販売ルートは「手売り」と言われているそうです。
結構ややこしくなってしまったので、一つの図にまとめてみますね!
これはあくまで一例にすぎません。
なかには販売会社や食品卸を通さず直接小売店とやり取りするケースもあります。或い
は、メーカーのプロセスももっと細かく分解できたり、あるいはこの図にはない独自の
工程もあったりします。現実には、商品がどのように回っているのかは、メーカーご
と、商品ごとの、ケースバイケースだということを忘れないでください。
ただ上記の図が頭に描けると、大枠は理解できますね!!
<販売チャネルについて>
販売チャネルについても少し触れておきます!
チャネルという表現はビジネスでは当たり前のように使われていますが、学生にとって
はなかなか聞きなれない言葉ですね。
販売チャネルと言うのは、商品を販売し、消費者がどこで買うかという場所のことです。
上の図で、言うと一番最後の ”小売店他” の部分にあたります。
飲料商品には、大きく4つのチャネル:
1)コンビニ、2)スーパー、3)自動販売機、4)飲食店/売店 が存在します。
1)コンビニや2)スーパーは王道のチャネルですね。みなさんも飲み物を買うとしたら、まず
この2つだと思います。
3) 自動販売機は、飲料業界独特の販売チャネルです。たまに食品などを売ってる
自販機もありますが、自販機といえばうやはり飲み物ですよね!これは食品や化粧品と
いった他のメーカーにはない販売チャネルです。
飲料メーカーは自動販売機を設置し、商品を販売します。自動販売機オペレーター業務
を飲料メーカーの子会社が行っている場合(=メーカー)と、
独立系の別のオペレーター会社(≠メーカー)を通じて行う場合があります。
4つ目の飲食店への販売も、飲料メーカーにとって大切なチャネルです。
ファミレスのドリンクバー、ハンバーガーチェーンのドリンクが特定のメーカーの飲料
になっていることにお気づきでしょうか?人気の飲食店に自社の飲み物を使ってもらえ
れば、大きな収入源間違いなしです!
余談ですが、アメリカの例でいえば、ピザ屋さんがお店にコーラを置くとき、ペプシを
選ぶか、コカ・コーラを選ぶか、みたいなもんです。僕は、アメリカではコカ・コーラ
派です。ペプシしかないと言われると少し萎えます(笑)
<飲料業のビジネスモデル>
ドリンクバーなどの特殊なものを除き、一般の商品価格の構成は以下の感じです。
中身+容器+パッケージ+宣伝広告費用+(メーカー利益)+(小売店利益)=売値
各社は当然原価率を公表はしていないので一般論でしかありませんが、
パッケージ(缶やペットボトル)の製造コストの方が 中身より高いと言われています。
500mlのペットボトルの容器代が10円~15円、それに蓋とラベルを加えても15円~20円
程度です。缶の場合はペットと同程度か若干安いと言われています。中身はそれより安
いために、値引販売されなければ利益率はまぁまぁ高いですね。
ある程度商品を売り切ることが出来れば利益を出せるのが飲料メーカーの基本のビジネ
スモデルです。
(参考:https://syukatsu-answer.com/2018/12/18/industry-research-beverage-manufacturer-biz-model/)
飲料業界考察 「会社四季報」業界地図を踏まえた動向
1. 好調分野と低調分野に二極化
会社四季報によれば、売れ筋が良い好調分野は ペットボトルコーヒーや炭酸水です。反
対に、低調分野は自動販売機の売り上げです。特に缶コーヒーは大きく売り上げを落と
しています。低調の主な原因はコンビニの100円コーヒーなどの普及ですね。
コンビニの存在は、自販機販売に大きなダメージを与えているのが現状です。
2. 国内全体の飲料市場縮小によって売り上げが低下
飲料業界の特徴は、マーケット自体が成熟していることです。たしかに、最近バンバン
飲み物の新商品が出まくっているというよりは、各メーカーブランドの商品が安定的に
売れているって感じですよね! “安定的”の裏を返せば、これ以上の伸びはなかなか期待
できない、とも捉えることができます。加えて、飲料業界のようなBtoC業界において人
口減少は大きな壁になります。消費者に買ってもらって儲かるわけですから、肝心の消
費者減少はきついですね、、、
一言でまとめると、マーケットの成熟×人口減少=市場の頭打ち です。
そのため近年は売上低下に伴い、
a)経営統合とb)海外への進出の動きというのが業界内で目立っています。
経営統合の例
・コカコーラの東西統合
・キリンが小岩井乳業を100%所有
https://gyokai-search.com/3-drink.htm
海外進出の例
・おーいお茶 in オーストラリア&北米
https://www.itoen.co.jp/oiocha/world/
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2015/20150701_1.html
日本の消費者ではなく、海外の消費者へ、というのは、妥当な考え方ですね。
ただ先述の通り、商品は消費者に買ってもらえてはじめて利益が出ます。注意すべき
は、人がたくさんいるからってといって、売れるとは限らないということです。
想像してみてください。
日本に、イギリスの紅茶メーカーの商品がきたとします。一時的には流行るかもしれま
せんが、「結局は午後の紅茶が一番やね」みたいな会話って容易にイメージ沸きますよ
ね。違う国に日本からの製品が入ってきたら、同じことが向こうの国の立場でも起きる
わけです。
こう考えてみると、海外で物を売っていくというのは、想像以上に難しく、リスクも伴
うということを理解しておきたいですね。ゆえに、海外で売るには、よりクリエイティ
ブかつ深い思考が必要になると思います。
3. 少子高齢化による酒類や炭酸飲料の消費量低下、健康に配慮した商品の人気増
無糖炭酸水をはじめ、健康に配慮した飲料が人気な一方で、コーラやファンタのような
炭酸飲料は全体として販売数が減少気味です。糖質ダイエットが最近の流行りというこ
ともあり、炭酸水は結構飲んでる人多いですよね~。
このように消費者の嗜好や時代の流れが売り上げに直結します。
社会の流行を反映した商品開発とマーケティング戦略が見られるのが、業界の特徴です。
コンビニに陳列されている商品のラインナップを見ると、案外最近の流行りが読み取れ
ます。
みなさんも、注意深く出回ってる商品を観察してみると、メーカー側の仕掛けに
気づくこともあるかもしれないですね!(笑)
飲料業界の主要な企業とシェア
ここでは、清涼飲料業界の販売シェアをまとめます。
①コカ・コーラグループ…27.6%
②サントリー食品インターナショナル…20.5%
③アサヒ飲料…12.9%
④伊藤園…11.0%
⑤キリンビバレッジ…10.5%
⑥ダイドードリンコ…3.1%
⑦大塚ホールディングス…3.0%
⑧カゴメ…2.3%
⑨ポッカサッポロフード&ビバレッジ…2.3%
⑩JT…1.6%
(参考:https://careerpark.jp/22202)
このように見てみると、上位5社で約80%の業界シェアを獲得していることが分かりま
す。いわゆる寡占状態と呼ばれるものです。年月をかけて私たち消費者の間に作られた
ブランドはやはり強いですね。その牙城を崩すのは、なかなか容易ではありません。
ダダオの例)
やっぱ謎のお茶買うよりは、私も爽健美茶をついつい手に取ってしまいますし、新しい
炭酸ジュースよりは、安定の三ツ矢サイダーを買っちゃいますよねぇぇぇ
ここからは余談ですが、飲料業界の上位を占める会社は、飲料業メインの会社もあれ
ば、いくつかある事業の一つが飲料業、というパターンもあります。
業界1位のコカ・コーラはメイン事業が飲料業です。2位のサントリー、3位のアサヒ
も、飲料がメイン事業です。ただ皆さんもご存じのビールが主要な製品の一つですの
で、清涼飲料に加え、酒類の存在は会社にとって大きいです。注目すべきは、5位のキ
リンビバレッジ、親会社はキリンホールディングスになります。その主要事業を見てみ
ると、国内飲料事業に加え、海外飲料事業(約23%)、医薬バイオケミカル事業(約20%)と
あります。
他の会社と比べると、海外事業の比重、また飲料以外の事業も会社を支えていることが
分かりますね。
同じ飲料メーカーでも、異なる特徴があります。企業を選ぶ際は、それぞれの企業を細
かく見てみることをオススメします。より自分に合った仕事や環境が見つかると思います。
(参考:https://syukatsu-answer.com/2018/12/18/industry-research-beverage-structure-major-companies/)
コカ・コーラの具体的な事例を紹介しておきます。
これはホームページで公開されている、2017年のアニュアルレビューを参考にしています。
下記リンクの7~10ページにかけて、コカ・コーラ社の飲料事業について、図やグラフな
どを使って、とっても分かりやすくまとまっています。
ぜひリンクをたどって、p7~10ページをちらっと見てみてください。
本記事で書いてきたビジネスモデルや仕組みが実際の企業の事例を通じて見れるので、とってもイメージが沸くと思います。
細かく書いていると長くなってしまうので、ちょっとだけ触れますね。
8ページに各販売チャネルについて書かれています。
こう見ると、各チャネルごとに、販売促進のための様々な工夫や施策がありますね。飲
食店でのノンアルコールカクテル企画や自販機でのアプリなど、面白いですね。
9ページの製品別の概要では、ペットボトルが半分以上を占めていることが分かります。
そして何と言っても、代表製品一覧です。
アクエリアス、コーラ、ファンタ、爽健美茶、いろはす etc..
こう眺めてみると、コカ・コーラ社のブランド力に改めて感嘆させられます。笑
飲料業界の職種
もうここまでで、だいぶ業界の全体像は掴めたのではないでしょうか。
ここでは、一般的に考えられている飲料メーカーの職種をさらっとご紹介します。
ただ、各メーカーによって具体的にどんな部署と職種があるかは様々あるかと思いま
す。この記事を入口に、より具体的な情報は実際に働かれている人に聞いてみるのがい
いと思います。
・市場リサーチ・技術開発・基礎研究
味などの研究、安全性試験、パッケージ開発などを行います。
・商品開発
どんな商品を作るか、味にするか、新商品案から既存製品の改善まで幅広く企画&
開発を行います。
・調達
作る商品が決まれば、それに必要な原材料が必要になります。
それを調達する仕事です。
・製造 (生産管理、品質保証)
大量の商品が工場で生産されることになりますので、
それに従事する人、管理する仕事です。
・物流
いわゆるロジスティクス分野です。例えば、工場から各地の倉庫へ効率よく
低コストで商品を移動させるルートや方法などを考えます。
・マーケティング&プロモーション
市場リサーチと重なるところもありますが、まずは“イマ”の消費者のニーズを
リサーチします。また完成した商品を流行らせていくために、CMや広告を考え
たり、広報企画を練ったりします。
・営業
営業企画、量販営業、業務用営業があり、いわゆる、営業職です。
各販売チャネルにいかに、自社の製品を置いてもらえるか、使ってもらえるか、売
上を左右しますね。
+上記に加え、その他 経理、人事、総務等々の一般事務も存在します。
(参考: 飲料メーカーの仕事内容を理解しよう | MatcherDictionary
企業リスト
最後に、飲料メーカーのリストを載せておきますね。
業界シェアのところで企業に触れましたが、改めてまとめておきます。
飲料:
コカ・コーラグループ、サントリー食品インターナショナル、アサヒ飲料、伊藤園、
キリンビバレッジ、大塚ホールディングス、ダイドーグループ
乳業:
明治ホールディングス、森永乳業、雪印ミルク、ヤクルト本社
※ 乳業に関しては、乳製品などがメインですので具体的に触れることはありませんでし
たが、いくつか清涼飲料の商品を出しています。たとえば、イチゴオーレやコーヒー牛
乳は清涼飲料のものもあります。
以上、飲料業界の概要になります。結構長くなってしまいましたね。
読んで頂いた皆様ありがとうございました!!!
いかがだったでしょうか?
私たちに馴染みのある飲料品ですが、改めて業界やビジネスを考えてみると新たな発見
や学びもあった人もいらっしゃったと思います。
私たちもこの業界研究を通して、「なるほど~、自分たちの見えないところでそうなっ
ているのか!」などなど多くの気づきがありました!
個人的には奥がとっても深い業界だと思います。これから、コンビニやスーパーいくと
きは、ドリンクコーナーが気になっちゃいますね!(笑)
それでは、この辺で終わりたいと思います。
次回は、加工食品業界について書いていきます。
それではみなさん、またお会いしましょう!!
ダダオ&シャオム