岩波書店ってどんな会社?

どうもシャオムです。

今年に入ってから岩波文庫岩波新書を読むことが多く、会社自体に興味がわいたので、簡単に調べてきました。出版業界の研究回はまた別で出せればなと思います。

岩波書店と言えば、古典の原著をたくさん出版している、左寄りの書物が多い、というイメージでした。実際調べてみると、以下のようなことがわかりました。

  • 1913年創業
  • 夏目漱石『こころ』『夏目漱石全集』を最初に発刊したことが有名
  • 広辞苑』を出している
  • 社員は100~200人ほどで推移
  • 出版業界の中では決して業績が良い方ではない(後日業界研究で詳しく書きます)

さらに岩波書店について特筆すべき点は2つです。

まず、コンテンツ系の出版社(川上と呼ばれる、小売り→川下、卸売り→川中)の多くは、小売店に対して委託・返品制をとっています。これは、売れなかった本は返してねということです。出版社にとっては委託・返品制があることで本が売れないリスクを減らすことができます。しかし、岩波書店は伝統的に責任販売制をとっています。この制度の下では、小売店本が売れると売れないとに関わらずすべて買い取らなければなりません

次に国内左派との関係性。岩波書店は1932年に『日本資本主義発達史講座』という書物を刊行しました。これはマルクス主義の学者たちが共著したものであり、当時の日本共産党の基礎になったといわれています。この著者たちは「講座派」と呼ばれ、岩波書店は彼らの拠点となります。1936年に共産主義者の検挙が行われ、講座派は解散したことになっているようです。

 

今回調べてみて、なるほど岩波ってのはこうなってるんだな、と少し理解できました。岩波でしか読めないマニアックな歴史書学術書は多くあると思うので、息長く本を出し続けてほしいですね。

最後に会社概要「岩波の志」から引用して終わります。

 いま、敗戦とは別の意味での、荒廃した風景が日本を覆っています。表現の自由への攻撃、報道の規制、公文書の改竄、歴史事実の否定……。いわば近代国家、民主主義の基盤の破壊です。ネットにあふれる侮蔑の言葉や隣国への敵視・嫌悪の源には、衰退と停滞と閉塞があります。

(中略)

 七十五年前、敗戦に際して、多くの人々が日本を再生しよう、そのために、政治・経済も社会も変えよう、教育を刷新しよう、と決意し、活動を始めました。先人たちが諸問題といかに取り組み、思考し、解決を模索したか。その軌跡は、私たちの前に、人文・社会・自然科学をはじめ、文学作品、ヒューマン・ドキュメントにいたる広範な分野の成果として存在します。

(中略)

 二〇二〇年の年頭にあたり、私たちは、再び「読む」ことから始めよう、と呼びかけます。岩波現代文庫に収められている『読書術』で加藤周一は、「どういう対象についても本は沢山あり、いもづる式に、一冊また一冊といくらでも多くのことを知ることができます」と語っています。
 本を、ゆっくりと、味わいながら「読む」。そして、多くのことを「知る」「想像する」「考える」。それについて、誰かと対話する。対話で得た本をまた「読む」。この繰り返しの中に、他者と共有できる論理、他者を理解する想像力が生まれます。自分の知らない世界に目を向け考える力、人や社会を信じる力が生まれるのです。

 

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