『動物農場』でオーウェルが描いた世界

どうもシャオムです。

今回は、ジョージ・オーウェル作『動物農場』を読んで記事を書きたいと思います。3年くらい前にオーウェルの『1984年』を読んで、強い印象が残っていました。久しぶりに本屋さんを適当にうろうろしていると、『動物農場』が目に入ったので手に取ってみました。

動物農場』は、副題に「おとぎばなし」とあるように、動物たちの社会を描いた空想の物語です。しかし、実は動物たちが暮らすこの農場は、そのまま第二次世界大戦前のソビエトの政治を映し出したものです。

 

動物たちが暮らす農場はずっと、ジョーンズさんという人が所有していて、動物たちは奴隷のように働かされていた。あるとき、革命が起き、動物たちが人間を一斉に襲い、ジョーンズを追い出した。それ以来、動物たちが自治する「動物農場」が完成した。動物たちは自由を手に入れて、毎日嬉々として働くようになる。しかし、動物の中でもっとも賢いとされ、指導者となった豚は、だんだん権力をむさぼるようになっていく。はじめ全員で取り決めた動物界の法律は、知らない間に書き換えられ、豚に意見するものは処刑されるようになっていく。物語は、最後、豚が2本足で立ち上がり、人間のようにムチをもって現るところで終わる。

 

動物農場で起こることは、当時のソ連で起こった一連の出来事を表しています。巻末の川端康雄氏の解説にもある通り、動物たちが人間を追い出す場面がロシア革命動物農場の大風車建設が第1次5か年計画による農業集団化、となりの農場を経営する人間との取引が独ソ不可侵条約、その後人間が動物農場を襲う場面がドイツ軍のソ連侵攻、という風に出来事が対応しています。

オーウェルがこの本を出したのは1945年。戦後、この本は、アメリカをはじめとする西側陣営によって、共産圏批判のためのプロパガンダに利用されることになります。しかし、オーウェル自身が社会主義者であったことからもわかる通り、彼は決して西を善、東を悪と断定したのではないでしょう。彼が描きたかったのはむしろ、権力によって堕落する人間の心であり、無知が故に搾取されてしまう大衆の愚かさだと思います。

今、世界を支配しているのは共産主義ではありません。しかし、これからの市民と政治の関係を考えるとき、オーウェルの鳴らした警鐘は、今また響きを増しているような気がしてなりません。

 

動物農場: おとぎばなし (岩波文庫)

動物農場: おとぎばなし (岩波文庫)

 

f:id:honmadesukate:20200710151723j:plain