現代経済の独占について考える

どうもシャオムです。

独占禁止法」という法律がありますが、具体的に何を禁止しているのか知っているでしょうか。独占は禁止されているのに、一つの企業が独占しているのでは?というようなサービスもあるのではないでしょうか。今回は、独占についてざっくりと考えていきたいと思います。

まずは独占とは何かを説明しましょう。マンキュー経済学*1では、独占企業とは、市場においてある商品の唯一の売り手であり、またその商品の代わりになるもの(代替材)が市場にない状態にある企業のことをいいます。また、一つの企業ではなく、複数の企業によって、市場が支配されている状態を寡占といいます。いま、日本では資本主義が経済の原則になっているので、モノの価格は、企業の自由な競争のもとで決まることになっています。消費者は、同じ価格なら質や量の良いものを、同じ質や量なら価格が低いものを選ぶという原則があって、これを合理的といいます。誰でも商品を作って市場に出せる状態なら、常に良い商品、安い商品を作ろうというモチベーション(インセンティブ)が生まれ、イノベーションは起こりやすく、人々の生活は豊かになります。しかし、ある産業を一つの企業が独占してしまうと、消費者は、その企業が作る商品が安かろうと高かろうと、また質が良かろうと悪かろうと、その商品はその企業から買うしかなくなります。すると、企業にはより良い商品、より安い商品を作ろうというモチベーションは薄れてしまいます。また、経済全体の発展も妨げられてしまいます。これらの理由で、独占は一般的には禁止されているわけです。日本では、公正取引委員会という内閣の機関によって独占禁止法が運用され、独占やそれに近い取引が取り締まられています。

では、そんな中でも独占や寡占に近い状態にある産業のことを考えてみましょう。たとえば、郵便局は、行政機関ではなく、民間企業です。1990年代から始まった郵政民営化の政策によって、郵便事業が民間の管轄になりました。ただ、その実態は、私たちが普段訪れる郵便局、すなわち日本郵便株式会社が、郵便事業を占拠しているように思われます。これは、独占禁止法に照らして合法でしょうか。

2006年に郵政民営化に伴って、公正取引委員会が出した文書*2には、「日本郵政公社(当時)の信書便事業における市場支配力の濫用が行われないよう、公正取引委員会としても独占禁止法の厳正な運用を行っていくことである」と述べられています。ここからわかることは、理想的には他の民間企業が郵便事業に参入し、公正な競争が行われるべきであるが、それまでの郵便局の既得権益と、全国にポストを設置しなければならないなどの制約を考えると、すぐに新しい企業が参入するのは難しい、といったところなのではないかと思います。国からしてみれば、現状の日本郵便が独占しているかのような状況は、「公」から「私」への移行の途中の段階だということです。郵便事業の例からわかるように、独占については、政治的、歴史的な事情がかなり絡むということです。

郵便事業は、それまで公的サービスだったものが民営化された例ですが、これとは違う、実質的な独占のパターンもあります。たとえば、Appleは、スマホの生産では、半分独占しているようなものです。iPhoneAndroidかという限られた選択肢の一方をすべて占めています。これはなぜ起こったかというと、圧倒的なAppleの強さから来ています。他社を寄せ付けない圧倒的な性能から、市場での立場を確立したといえます。このように、独占には、実力でのし上がるパターンもあります。

今回は、独占について考えてみました。独占には全体が損をするという弊害があることから、市民の一人一人がある意味で敏感になっておく必要があることなのではないかと思います。

*1:N. Gregory Mankiw. Principle of Economics 7th edition. 302ページ

*2:郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題について

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-sonota/h18/06072102_files/06072102betten1.pdf

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