『相席食堂』に見るテレビ文化の変容

どうもシャオムです。

毎週火曜にABCテレビで『相席食堂』という番組がやっています。芸能人の誰かがロケに行き、その映像をMCの千鳥がスタジオで見るという企画です。千鳥が映像を見ていて突っ込みたいところがあれば、ボタンを押して映像が止まり、口を挟むことができます。この番組の特徴は、千鳥が、ロケに行く芸能人の心理や思惑の部分にまで踏み込んでいき、普段私たちが見ているロケの「裏側」を見られるということです。

視聴率のデータは出てこなかったのですが、2年前に深夜で始まって以来、放送時間が30分から1時間になったり0時台から23時台に進出したりしているので、テレビの中では好調な番組といえます。

『相席食堂』に人気が出ている背景には、テレビ文化の変容が見て取れるのではないかと思います。それはつまり、視聴者の「作られたものへの忌避」という心理が大きくなってきたということです。もともとテレビのバラエティーは他の芸能と同じように、作家がいて演者がいて、入念に作り込まれたものでした。タレントのトークがメインとなっているいわゆる「ひな壇型」の番組は、入念に作り込んだうえで、いかにリアルに見せるかが肝心だったのではないかと思います。しかし、テレビ界で「やらせ」が非難される風潮からもわかるように、「作り物」への視聴者の目はだんだん厳しくなってきています。リアルに見せている作り物は、作り物として見るとどこか冷めてしまいます。現代の視聴者は、「作られたリアル」はリアルでないとすでに認識しています。そこへきて、本当にリアルな、台本のないバラエティーが面白く映るようになってきたのではないでしょうか。

『相席食堂』はそういう意味で、とてもリアルです。タレントがロケ先で何かを食べて「これおいしい!」と言うと、大悟が「いや絶対思っとらんやろ」と言います。地元の人々と絡むシーンでは、「もっとこういう風に話を引き出さんと」とか、「今のはいい返しやったよ!」とか言います。要するに、今までのバラエティーが作られる過程を視聴者と共有しているのです。視聴者は番組が作られる過程という「リアル」を見ることによって、タレントの素の部分をおもしろがることができます。現代の視聴者は、圧倒的に作り込まれた作品よりも、自分にとって身近なものや人に惹かれるのかもしれません。テレビ全体の視聴者の減少も、このことが関係しているのではないかと思います。芸能人という少し離れた存在よりも、Youtuberのような自分たちと「同じ側」の人間を見たいという心理です。いずれにしても、今後のバラエティーがどうなっていくのかは興味深いですね。

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