シャオムとオレパの図書室

磨くは一生-学びつづける教師に-

「先生、どうやったら数学できるようになりますか?」 もともと数学が得意だった私にとって、この質問は最大の難問だった。どうすれば子どもの気持ちがわかるだろうか。悩む私に、ある先輩は、「自分が苦手な分野を思い浮かべて」と。たしかに、苦手なことに…

歴史の中の8月6日

世界がコロナに翻弄される中迎えた 原爆投下から75年目の8月6日 小学生のとき見た広島の写真も 中学生のとき聞いた原爆の話も 心に刷り込まれて 「原爆は怖い」ということを 今も教えてくれている 教育が戦争を防げるとしたら それはどんな教育だろうか 戦争…

訳者あとがき【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作

訳者あとがき シャオム 僕がオレパと出会ったのは、今から4年前の9月でした。夜、大学から寮の部屋に戻ると、細身で小柄な、生粋のケニア人はそこにいました。陽気だが少し人見知りな、人間臭い男でした。オレパはすぐに寮生たちの人気者になりました。サ…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #6

The formal procedures of court were done and the cases kicked off. The first case of the day was of a woman who was suing a local radio station for wrong weather prediction. The Truth FM had predicted that on the fateful day, there would b…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(6完)

裁判所の公式な儀式は終わり、いよいよ裁判が始まった。この日の最初のケースは、天気予報が外れたとして地域のラジオ局を訴えた女性であった。Truth FM はその運命の日、大雨が降ると予報し、住民たちに厚着と傘を持つこと、そして泥靴を忘れないよう忠告し…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #5

Justice Cohen a judge in Township Law Courts was the leader of the interview. After analyzing the results of the interview, it was not surprising that Mrs. Cohen–his wife was the top candidate for the job. The other candidate would automat…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(5)

地方裁判所の裁判官ジャスティス・コーヘンがインタビュアーのトップであった。インタビューの結果を分析してみると、もっともその新しいポストに近い候補者が、コーヘンの婦人であることは、驚くべきことではない。裁判所の詳細な規定によると、もう一つの…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #4

His graduation marked the end of college studies and the beginning of a long journey in pursuit of a job. He attended many interviews. To his disappointment, he always misses and opportunity despite performing well in the interviews. Manda…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(4)

ンバクは大学を卒業し、就職に向けての長い旅に出た。彼は何度も面接を受け、感触はよいのに一向に合格しなかった。マンダレーは息子の不幸を、近所に住むジョンテ氏のせいにした。ジョンテ氏が魔女を訪れていたからである。マンダレーは、かつて自分が新聞…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #3

All this Mbaku was thinking at his four-walled less-spacious room. He could touch all the corners of the room while sitting on his bed. Life has been so unfair to him, he thinks, since he missed a chance in Law school. Mr. Bingi was now ag…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(3)

ンバクは四方を壁に囲まれた狭苦しい部屋で考えていた。ベッドに座ったまま四隅に手が届くほどの広さだ。「人生は不公平だ。」ロースクールに行くチャンスを逃して以来、彼はそう思うようになった。ビンギ氏は歳をとり、人生の意味を失った。ンバクに仕事が…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #2

Mr. Bingi had then used all the money in schooling his son through all the levels of education. When he was young, Mbaku had wished to join the military. He liked the colour of the uniform and the status attached to the job. Titles like Li…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(2)

ビンギ氏は全財産を息子の教育にあてた。ンバクは幼い時、軍に入りたかった。彼にとっては軍服の色が素敵であったし、軍人という仕事がかっこよく見えた。大尉、大佐、少佐、警視正、軍曹-そういう名前があこがれであった。しかし、困難とトラウマの戦慄的な…

【Short Story】"Who is A Just Judge?" by OLEPA #1

Who is A Just Judge? Mandalay was his nickname. Yes, you could be forgiven for thinking that that’s a name of a city. He was nicknamed in the village after serving as a King’s African Rifles in the Second World War. As other soldiers servi…

【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(1)

どうもシャオムです。 連載小説の第2弾『ジャストジャッジ』をスタートします! 今回の物語は、大学時代のシャオムのルームメイトだったオレパによる当時の作品です。オレパはケニアからの交換留学生として日本にやってきて、勉強の合間に執筆活動をしていま…

【連載小説】『シェムリアップ』~シャオムの備忘録~

シャオムの備忘録 1月3日(金) ・朝早すぎる ・久々の国際線に空港での時間配分を間違う ・ハノイのバーガー屋重い ・ハノイで飛行機のチケットに不備 ・ガタガタの道を通って街へ ・Travelers homeは割ときれい ・アマゾンカフェで安木・炭谷と出会う ・い…

【連載小説】『シェムリアップ』~5日目(後編)〈完〉~

最後の目的地であるタ・プロームの近くに着くと、ソニアは 「私はこの辺りで待ってるから、二人で見てきな」 と言った。アンコール・ワットからずっと遺跡を案内してくれた彼女は、暑さもあって少し疲れていたのかもしれない。 「ダダオ、じゃあ見学が終わっ…

【連載小説】『シェムリアップ』~5日目(前編)~

5日目 朝9時を少し過ぎたころ、トラベラーズ・ホーム前に紫色のジープが停まった。向かいのレストランで朝食を済ませたシャオムとダダオは、すぐにそのジープを発見した。 「あれはすごい。ほんまにラベンダー色や」 朝の日差しに照らされたそのジープは、…

【連載小説】『シェムリアップ』~4日目(後編)~

シャオムが目を覚ますと、時刻は16時を回っていた。シャオムは2時間ばかりの休養と水分補給で大分回復していた。当初の予定ではミュージアムの後、再びマットのオフィスを訪ねる予定だった。ダダオは少し心配していたが、シャオムは具合が良くなったので…

【連載小説】『シェムリアップ』~4日目(前編)~

4日目 シャオムとダダオが目覚めると、ケンはもう出発していた。ケンはこの日の早朝のバスでプノンペンへ帰ることになっていた。三人はトンレサップから帰った後、中華のレストランで夕食をとり、パブストリートで乾杯するという長い一日を過ごした。そのせ…

【連載小説】『シェムリアップ』~3日目(後編)~

シャオムがつぶやくと、ダダオが答えた。 「これはね、おれの予想だけど、葬式だよ」 音が鳴る方に行くと、軽トラックのような車の近くに30人余りの村人が集まっていた。中には子供がたくさんいる。不思議そうにキョロキョロしているツアー客に、サムは言…

【連載小説】『シェムリアップ』~3日目(前編)~

3日目 果たして、ツアーは8人程度の参加であった。白いバンがトラベラーズ・ホームに到着すると、すでにほとんどの参加者が車内にいた。バンはもう一組のトルコ人の夫婦を拾い、郊外に向かって走り出した。ツアーはサムという若い男がガイドを務めていた。…

【連載小説】『シェムリアップ』~2日目(後編)~

20世紀に入るころ、カンボジアはフランス領インドシナに編入されていた。1940年、フランスはナチスに侵攻されると、親独のヴィシー政権が樹立し、ドイツの同盟国であった日本の北部仏印進駐を認めた。すると、カンボジアが位置する南部仏印の領土をめ…

【連載小説】『シェムリアップ』~2日目(前編)~

2日目 翌朝はよく晴れた。シャオムにとって初めてのカンボジアの朝である。建物の間から南国の木々が背を伸ばしていた。真冬の日本から来たばかりのシャオムの体にはカンボジアの暑さがこたえていた。 「ここのパンはうまいよ」 ダダオが勧めるので、シャオ…

【連載小説】『シェムリアップ』~1日目~

1日目 大衆的なカフェの店内は、午後6時にもかかわらずそれなりの人で賑わっていた。一番広いテーブルで、二人の短パンの男がノートパソコンを開いていた。 「やあ、遅かったね」 40歳くらいの方の男が、ダダオとシャオムを迎えてくれた。 「トゥクトゥ…

【連載小説】『シェムリアップ』シャオム作

どうもシャオムです。 今年の1月にカンボジアに旅行に行きまして、それはそれはたくさんのものを得ることができました。何らかの形でシェアできればなと思っていたのですが、今回、物語にして書くことにしました。この方が、気づいたこと、感じたこと、細か…

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