サザエさんのアニメ1話を分析してみた

どうもシャオムです。

僕は子どものころからサザエさんが好きで、今でもときどき見ています。何も考えずに見られるというのがサザエさんの良い部分だと思うのですが、実際のところ、なぜ面白いのかを調べてみようという気になりました。僕はお笑いでも映画でも、起承転結のある、また振りがあって落ちがあるようなものが好きなので、そういう視点で、サザエさんの構成を見てみることにします。

今回取り上げるのは、2007年4月1日放送の『わが家の豪華メニュー』の回。場面(カット)ごとに話のあらすじを見ていきましょう。全部で約7分です。

 

場面1(00:00~01:18)

週刊誌を読んでいたマスオは、「芸能人の1週間の食事」の特集を見て、自分の食生活との差に愕然とする。そして同じようにわが家の1週間の食事を書いた表を置いておき、少しでも食事が豪華になるよう期待する。しかしそれを見たサザエにはまったく響かず、「もっと締め上げないと」と言う始末。そこへ、悪だくみをはたらいたカツオがやってきて「その表を貸してくれ」と言う。学校で、自分の食生活をまとめる宿題が出たという言い、それを書き写そうとする。するとサザエは「こんなもの見られちゃ困る」と、明日からの1週間で書くように言う。

場面2(01:18~01:47)

サザエは翌日の朝食を張り切って作り、波平に「誰かの誕生日か?」と言わせるほど。マスオは自分の書いた表のおかげだと思っている。カツオは狙い通りご飯が豪華になり満足げ。

場面3(01:47~02:41)

サザエは街で中島を見かけ、学校で食生活の宿題が出ているのかを確認しようとする。しかし中島はカツオが企んでいることをすでに聞いており、話を合わせる。公園でカツオと合流した中島は、カツオの案を聞いて自分も同じ作戦を家で実行していると打ち明ける。2人がニヤニヤ話ているところへワカメが通りかかり、カツオが何か企んでいるのではないかと疑う。

場面4(02:41~04:25)

豪華な夕食を済ませた磯野家に花沢さんから電話がかかってくる。ワカメは、花沢さんなら真実を知っていると思い、カツオより先に電話に出てしまう。しかし、花沢さんは昼間中島とたまたま商店街で会っていて、カツオらの作戦を聞いていた。それどころか自分も家で同じ嘘を使い、今日はレストランに行くのだと言う。カツオはほっとするが、だんだんおおごとになってきたことを心配する。

場面5(04:25~05:58)

食材を買いにスーパーに行ったサザエは、たまたま学校の栄養士と出くわす。一緒について行っていたワカメがあれは栄養士さんだとサザエに教えると、サザエは急いで宿題の件を確認する。宿題がカツオのでたらめだとわかったサザエは、家に帰り波平に告げ口する。波平はカツオを叱り、見栄を張って豪華な食事を作り始めたサザエもみっともないと釘をさす。事の一部始終を知ったマスオは「カツオ君のおかげで美味しいものが食べられた」とのんきに笑っている。

場面6(05:58~06:56)

今度は波平が、病院の健康診断で、本当に1週間のメニューを提出するよう求められた。思いがけず、また豪華なメニューを食べられると思って喜んだカツオが食卓へ向かうと、ちゃぶ台にはアジの干物とほうれん草のおひたしが並んでいた。波平は「脂肪の取りすぎはよくない」と言い、マスオは「たまにはあっさりしたものも良い」と嬉しがる。カツオは「タマは喜ぶだろうけどなあ」と苦笑いしておしまい。

 

あらすじを確認したところで、構成を見ていきましょう。

まず場面1でマスオがメニューの表を書き始めたことで事件がスタートします。ここが起承転結の「起」ですね。

場面2から4が「承」。カツオの策略がだんだんおおごとになっていき、雲行きが怪しくなります。ここまでで時間的には約6割です。

そして、場面5。カツオの嘘がサザエにばれるところが「転」です。サザエの買い物にワカメがついていき、たまたま学校の栄養士さんに出くわすのですから、かなり不自然ですね。

場面6で波平がメニュー表を作らなければならなくなり、アジの干物が出るところが「結」になります。健康診断でメニュー表を書かされるというのもちょっと不自然ですね。

 

波平はサザエに「見栄を張るなんてみっともない」と叱っておきながら、自分の健康診断のためにあっさりしたものが出て喜んでいるところはちょっと滑稽です。中島や花沢さんの家がその後どうなったのか触れられていないのは、気になるところです。尺の問題で振りが回収しきれていません。アジの干物が出て、カツオが「タマは喜ぶだろうけど」というのはきれいに落ちていますね。

本来なら場面5で、カツオの嘘がばれたところで物語は解決しています。しかし、そうなると嘘をついたカツオがただの悪者になってしまうんですね。最後の1分で、波平の健康診断の話が浮上し、子どもが好きではないアジの干物が出てしまうという、いわゆる「懲罰」のようなことが起こることで、ある意味カツオの罪はチャラになっています。そして、思い返せば最初に事件のきっかけを作ったマスオが終始のんきに振舞っている様子にも、マスオというキャラクターがうまく描かれています。自分は何の悪気もなくメニュー表を書き、カツオの企てには「おかげで美味しいものが食べられた」というコメント。そして波平の健康に合わせたメニューに対しても「たまにはあっさりしたものも良い」と、いかにも何も考えていないようなセリフを発します。

7分という短い時間の中で、ちゃんと起承転結を作りつつも、いたずらをするカツオ、見栄を張るサザエ、心配するワカメ、怒りながらも自分の健康は気にする波平、そしてのんきなマスオという風に、それぞれの個性がはっきりと描写されています。こんな話を数千話も出し続けているサザエさんに、改めて敬服です。

 

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