【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(5)

地方裁判所の裁判官ジャスティス・コーヘンがインタビュアーのトップであった。インタビューの結果を分析してみると、もっともその新しいポストに近い候補者が、コーヘンの婦人であることは、驚くべきことではない。裁判所の詳細な規定によると、もう一つのポストには自動的に男性が当てられる。ンバクの名は有力候補として取り上げられていた。しかし、一本の電話が全体のシナリオを覆すこととなるのである。バンダ地方の有名な政治家であるホン・ロエは、コーヘン氏と選考委員会に電話し、自分の息子と、志願者の一人であるハッチン氏にポストを与えるように頼んだのである。ホン・ロエはさらにコーヘンら選考委員の指を「よいもの」で塗ると誓った。汚い政治家からリターンに何かをもらおうという考えは誘惑的すぎる。選考委員の一人である人権運動家のマディ氏はこのような病的な動きに抗議したが、口を閉ざされた。ついに、この国に「きれいな」者はいなかったのである。

結局、かつて高校でンバクのクラスメートだったハッチン氏がポストを与えられた。彼はクラスでは落伍者であり、ンバクと近しかったことはない。ンバクは彼が、試験でンバクの答案を写し、愚かなことにンバクの名前まで書き写したことを覚えている。けれどもそれが人生で、正しい人間はしばしば不幸である。長年のガールフレンドだったレギーが不幸だといってンバクを捨てたとき、すべては悪循環となっていた。

ンバクが瞑想から覚めると、その手は涙でぬれていた。彼はすぐに手をふき、洗面所で顔を洗った。バンダの伝統では、男の涙は見られると気まずい。彼は色あせたジーンズを足に通し、近所の農場で稼いだわずかな金をもって、バンダタウンへ向かった。

裁判所が開いてから、1か月が経過していた。そしてその日は、裁判員たちが招かれて、各訴訟が始まる日であった。ンバクは「聴衆の中の裁判官」になると決めた。1時間歩いたあと、彼はバスに乗って地方裁判所に向かった。ちょうど訴訟が始まる前に到着することができた。彼は裁判官や職員と目が合うのが恥ずかしかったので、彼と同じ側の聴衆たちに注目していた。司法手続きがどのように行われているのかを見ようと、老若男女多くの人々が足を運んでいた。

 

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