【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(3)

ンバクは四方を壁に囲まれた狭苦しい部屋で考えていた。ベッドに座ったまま四隅に手が届くほどの広さだ。「人生は不公平だ。」ロースクールに行くチャンスを逃して以来、彼はそう思うようになった。ビンギ氏は歳をとり、人生の意味を失った。ンバクに仕事が見つからないことも、もう待てなくなっていた。今や慈善者と非政府組織からの食糧だけがたよりであった。彼らの小さな畑も、絶え間ない干ばつと凶作でだめになっていた。苦難のさなかでもンバクは状況が一転することを待ち望んでいた。が、それがいつになるかについては一つの見通しもなかった。

 

 ンバクのベッドはでこぼこで寝心地が悪くなったので、唯一の備え付けである古い椅子を持ってくることにした。これで少しはましになったが、すぐに、それまでの報われなかった努力が彼の心を襲った。人生のターニングポイントは間違いなく、ロースクールに入れなかったことだろう。しかし、それは彼のせいでも彼の家族のせいでもないのだ。汚職とえこひいきに満ちたこの国では、それが世のならいであった。彼の分の枠はひいきされた誰かのものになった。もはや彼に生きがいはなかった。そんなあるとき、ゴーブという教授が彼に誘い話を持ってきた。政治と行政の学士号を取得しないかということであった。法学ではないが、ある意味似たようなものだということで、彼は教授に従うことにした。なんにせよ、学位は学位である。村の人々はこれを知らなかった。みんな、ンバクはロースクールで学んでいると思っていたし、このレティティ村から初めて最高裁判所に送りだすつもりだったのである。

 ンバクは大学で過ごした四年間を忘れてしまった。彼はひとり寂しく、自分の人生のゆくえを探っていた。仲間はみな金持ちの子だった。一方の彼はというと、稼いだお金はやっと食べていけるだけのものであり、その四分の一は生業のない家族に送らねばならなかった。衣服を買うのもたまのぜいたくであった。貧乏なせいでネットカフェに行けず、コンピュータの課題が終わらないこともあった。それでもなんとかンバクはアッパーセカンドクラスの成績で卒業した。卒業式に来たのは、父と地元の教会の司教だけであった。お祝いというにはほど遠く、彼らはただンバクを連れて帰った。司教の方は主に感謝し、ンバクをお祝いしていた。

 

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