【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(6完)

 裁判所の公式な儀式は終わり、いよいよ裁判が始まった。この日の最初のケースは、天気予報が外れたとして地域のラジオ局を訴えた女性であった。Truth FM はその運命の日、大雨が降ると予報し、住民たちに厚着と傘を持つこと、そして泥靴を忘れないよう忠告した。しかし、ロニー女史は雨の日の服装をした結果、その日は晴れ、強い日差しが照り付けた。彼女は激しい発汗により脱水症状を訴え、さらには路上でその無駄な厚着を嘲笑された。原告は、嘲笑により精神的トラウマに苦しみ、その後病んでしまったと述べた。ンバクは、自分が裁判官ならこの女性が一般常識を用いるべきだったとしてこのケースを退けるだろうと思った。その日は雨期ではなく、大雨が降ることは珍しい。結果的には、ジャスティス・コーヘンは、女性は医療費を支払われるべきだという判決を下した。二つ目のケースは、スピード違反で起訴された男についてだった。警察によると、男は高速道路の速度規制に反して、時速360マイルで走っていた。後になって、それは飲酒運転だったとわかった。被告は答弁で、そのような速いスピードが出る車を作った企業に責任をなすりつけた。裁判官は男に懲役5か月を言い渡した。ンバクは、男に運転を続けさせた警察にも問題があると思った。

その他のケースはあまり重要ではなかった。たとえば、ハンバーガーの中にナイフが入っていたと言ってレストランを訴えた男である。彼はその後あらゆる料理を食べるのが怖くなったと言った。裁判官はレストランを料理に故意に危険な物を入れた罪で罰金を科した。

その日の最後のケースは、ンバクにとってもっとおもしろいものであった。「貧しい子供たちのバンダ奨学金」は、ある学生を小切手の偽装容疑で訴えた。被告人は、彼自身を含む六人の受給者の小切手を入手し、そして自分の名前のみが書かれた小切手を偽造し、六人分の受給者となっていたのである。しかし彼は、奨学金事務局のすべての不正の小切手をすべて掘り起こすために、故意にやったと主張した。その生徒は事務局を、援助金の分配が偏っているとして非難した。彼が事務局の正義を追い求める前も後も、事務局による偽造の被害者であったと証言した。彼はすべての真実が明るみに出るようにと思って偽造をはたらいた。ジャスティス・コーヘンは彼に違法行為で1年間の懲役を科した。ンバクはしばし考えた。それは実際に難しいケースであった。彼は、偽造をはたらいた生徒は、将来の公共の利益のために自らを犠牲にしたという点では正しいと思った。もしンバクが裁判官ならば、奨学金の部局の職員をすべて解任させ、調査を入れるだろう。

裁判はすべて終わり、人々は今日のケースや判決について議論しながら退室していった。ンバクはまだ席についていた。彼はジャスティス・コーヘンとは反対の判決を下したのである。彼は思った。「誰が正義の裁判官なのだ?」

 

(おわり)

 

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