『西欧の顔・日本の心』を読んで

どうもシャオムです。

今回は、木村尚三郎『西欧の顔・日本の心』を読んで考えたことを、記していこうと思います。塾で中学生の国語のテキストに出ていて、興味深かったので、取り寄せて読んでみました。初版発行が1980年ともう40年前になりますが、今でも価値ある内容でした。おもしろいと思った視点をいくつかまとめてみます。

 

1.地方主義と普遍主義

ヨーロッパは歴史的に、各国が自己閉鎖的であり、長い間戦争を経験してきた。一方アメリカは、同じ憲法のもとに各州を統一し、世界に通用する科学技術を発展させてきた。それは、ヨーロッパ人が農民的な「土に執着する」人々であるのに対し、アメリカ人が理念や理想に基づいて団結する、都市民的な人々だからである。

20世紀まで、ヨーロッパは土に執着する地方主義に生き、アメリカは理念に生きる普遍主義で世界を牽引した。しかし、1970年代以降、ヨーロッパにもEC、EUに代表される統合の動きが生まれる一方で、アメリカは世界をリードするというよりも自分たちの色を出し、アメリカはアメリカで連帯するという地方主義の要素を強めている。

 

2.日本人は「目」の人、フランス人は「声」の人

日本人は視線などの非言語のコミュニケーションが多い。一方フランス人にとっては、言葉で発されること以外は何も意味しない。ヨーロッパは伝統的に、自分の身は自分で守らなければならないという個人主義に生きている。言語は気心の知れない相手と交渉し、あるいはけんかするための道具であり、言語がなければ身を守ることはできない。反対に、日本人は江戸時代以降比較的平和な期間が続いたこともあってか、無意識のうちに「誰かが守ってくれる」という安心感のもとで生きている。そこではわざわざ声に出して自分を主張することや、生きるために相手を論破する必要性は低い。このような背景で、日本では非言語のコミュニケーションが発達している。

 

3.日本は島国ではなく山国

日本の昔話によく出てくるのは、海よりも山である。日本は島国と言われるが、室町時代以前、ほとんどの日本人は山間部で暮らしており、海は生活に身近なものではなかった。日本人が海に近い平野部で住むようになったのは、江戸時代に灌漑による稲作が発達してからである。しかも日本人が海を感じるようになってからも、海は単に防壁であり、世界へつながる入り口ではなかった。日本と同じく島国といえるイギリスは、積極的に海へ出ていき、自らが中心となって貿易の仕組みを作って繁栄した。このような国を海洋国家と呼ぶなら、日本は単に山が多い山国である。「島国」という言葉は、海によって閉鎖されていることのみを表す。

 

以上、まとめてみました。全体にわたって、地理と民族性の関係、都市の形態と民族性の関係がわかりやすく分析されていました。地理・歴史の観点から他国との比較で日本を見ることによって、今の日本の課題を考えるよいヒントを得られました。

 

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