保険の仕組み【ファイナンスを1から考える⑨】

どうもシャオムです。

Google持株会社であるAlphabetが、保険事業に参入するという記事を見ました。保険にはいろいろな種類があって、生命保険や災害、事故など様々なものへの損害保険があります。日本では、法律により保険業には様々な制限や保護がかけられていることからも、保険業界がある意味特殊な業界であることがわかります。今回は、そんな保険の仕組みを簡単に見ておきましょう。

まず、保険とは何かをシンプルに言うと、それはリスクの分担です。たとえば、地震が起こったとき、たまたま自分の家だけが倒壊してしまったとします。このとき、多くの人は、誰かの金銭的な助けがなければ、再起不能になってしまいます。しかもこれは自分に非があるのではなく、不運と言えます。そこで、保険の出番です。世の中には同じように、「万が一家が壊れたら助けてほしい」というような人がたくさんいます。これらの人たちが、ちょっとずつお金を出し合い、誰かの家が壊れた場合には集めたお金でその人を助けよう、という約束をする。これが保険の考え方です。1人では抱えきれないリスクを大勢で分担する、すなわち日ごろから少しずつ保険料を集め、いざ事故が起こったときに保険金を支払う。これが保険会社のやっている仕事です。生命保険や損害保険のようなもの以外にも、「リスクをみんなで分担する」という考え方は保険であると言えますね。

ちなみに、生命保険なんかには、掛け捨て型と積み立て型という2つのタイプがあります。掛け捨て型は、より原理的な考え方で、払った保険料は返ってきません。リスクを減らしてくれることへの対価として、保険料を支払うという仕組みです。一方の積み立て型は、保険が満期を迎えたときに(契約期間が終わったときに)払った保険料の一部が返ってくるタイプです。こちらはただリスク回避への対価だけではなく、もし保険金を受けとるような事故が起こらなくても、一定の額を返してもらうことができます。つまり保険に加入してリスクを回避しつつ、総合的な支出を抑えられるということです。ただし、積み立て型は、その分毎回支払う保険料は高めです。払った保険料が返ってくるので、一定のリターンを見込めるという意味で、積み立て型の保険は、お金の運用先としても機能します。

また、保険料の決め方の原理はどうでしょうか。地震のリスクを100人で分担しようとなったとき、支払う保険料は、100人とも同じではありません。世界には、地震の起こりやすい地域と起こりにくい地域があります。地震が起こりやすい地域に住んでいる人は、地震が起こりにくい地域に住んでいる人よりも、多く保険料を支払わなければなりません。なぜなら、災害に見舞われるリスクが高いということは、それだけ保険によって助けられる確率も高いからです。

それから、保険をめぐる問題も考えておきましょう。古典的な問題の1つに、モラルハザードがあります。たとえば、自動車保険に加入している人が「万が一事故を起こしても保険金が下りるから大丈夫」などと考え、危ない運転をしたとします。このように、リスクを回避するための仕組みによって、反対に秩序や倫理感が損なわれることをモラルハザードと言います。極端な話では、保険金で家族を助けるために自殺するという例もあります。このように、経済全体でのリスクの分担は、一定の危険を伴うことは理解しておきたいです。

以上、保険の基本的な考えを書いてみました。ファイナンスの企画も9回目になりましたが、ここまでくると、ファイナンスの本質はお金そのものというよりも、「リスク」であることがわかってきたのではないでしょうか。

f:id:honmadesukate:20200710151723j:plain