かけ算の順序について

どうもシャオムです。

少し前、SNSで「かけ算の順序」が話題になっている時期がありました。ある小学生が、算数のテストで、「クッキーを1人に2枚ずつ、5人に配ると、全部で何枚必要ですか」という問題で、「5 × 2」と式を立てたところ、正しくは「2 × 5」だとして不正解にされたというようなエピソードでした。かけ算は順序を入れ替えても結果が同じなのだから、「2 × 5」も「5 × 2」も正解だろうという主張がなされていました。今回はこの問題について、できるだけ数学の考え方に忠実に、そしてフラットに考えてみたいと思います。

まず、かけ算の順序は「2 × 5」でなければならないという人の意見はこうです。かけ算の順序には意味があり、2は1人あたりのクッキーの数、5は人数を表しているのだから、「2が5つある」と意味で「2 × 5」の順番が正しい。この主張はつまり、かけ算の式の順番と日本語の文が対応しているということです。これを「5 × 2」と書いてしまう子は、かけ算の意味がわかっていないとみなしているのです。

一方、かけ算の順序はどちらでも良いという人は、どう考えているでしょうか。シンプルな意見としては、かけ算は「交換法則」といって、かける順番によらず結果が同じになるので、順序にこだわる意味はないというものです。これは、僕が知る限りの数学の書き方のルールから言っても、筋は通っています。たしかに日本では、上に述べたような日本語の語順に対応させた順序に意味を持たせてかけ算の順序を教えています。しかし一方で、外国では別の考え方もあります。たとえば、ベクトルの変換で「回転」や「鏡映」などの概念があります。(x  y)という数ベクトルを回転させるためには、これに新たなベクトル(たとえばベクトルA)をかけます。このとき、書き方の習慣では、(x  y)Aと右からかけるのではなく、A(x  y) という風に、左からかけることになっています。つまり、かけられる数を左に書くという習慣は、必ずしも一般的ではないのです。

以上からわかることは、かけ算の順序の論争は、「そんなことで解答を不正解にして、子どもをつまづかせるべきではない」という思いが絡んでいるということではないでしょうか。かけ算の順序に意味を見出すこと自体は、重要な考え方といえます。しかし、それにこだわって正確に教えなければならないかというと、これはまた別の問題だと思います。ましてや、テストでそれを問うのかどうかは、本来そこまで重要では無いはずです。本来なら、式の意味を理解することが重要なのですが、だんだんだんだん、かけ算の順序でバツとするのかという、テストだけにこだわった議論になってしまいます。子どもたちがもっと算数や数学を自由に、そして深く学べるための議論が必要だと感じます。


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