【連載小説】『ジャストジャッジ』オレパ作(1)
どうもシャオムです。
連載小説の第2弾『ジャストジャッジ』をスタートします!
今回の物語は、大学時代のシャオムのルームメイトだったオレパによる当時の作品です。オレパはケニアからの交換留学生として日本にやってきて、勉強の合間に執筆活動をしていました。当時は、いつか出版できればいいななんて言っていましたが、今回、オレパの厚意により本ブログで初公開となります。
オレパによる原文は英語(原題 "Who is A Just Judge?")なので、それをシャオムが翻訳したものを公開します。英文でも同じペースで公開しようと思っていますので、そちらもよろしくお願いします。
法の世界を志していたオレパならではの短編『ジャストジャッジ』、スタートです。
ジャストジャッジ オレパ
マンダレーは町の名前だ。そう思われても差し支えないが、それが彼のあだ名だった。第二次大戦で、キングス・アフリカン・ライフル*1に仕えていた時についたあだ名である。他の兵隊と同じように、彼も適所に送られた。戦前から軍人であったビンギ氏にとって、戦地での体験は忘れがたきものである。なぜ彼らは戦っていたのか。時折独りで思索をめぐらしてもわからなかった。誰と戦っていたかもわからないのだ。
「マンダレー、北緯21度、東経96度」
話し方から、彼が指示を出していた人物だとわかるだろう。
「ンバク!こっちだ!ラジオをつけろ!インチキ政府の計画は何だ!」
ンバクは彼の息子である。ンバクは一人っ子であるだけでなく、ビンギ氏がビルマから帰ってきた後にできた大事な子供であった。
「ンバクはビルマ人さ」
ビンギ氏はよく仲間に冗談を言う。ンバクは彼が故郷に帰ってきてちょうど一週間後に生まれたのである。
「今日は歴史の授業で第二次大戦を習ったよ。ビルマのお話を聞いたんだ」
ある日ンバクは学校の話をした。
「おお、ビルマ!ビルマのことなら教科書を書いたやつでもおれにはかなわないだろう!」
マンダレーは得意そうに語った。そしてそれは本当である。彼は7年間ビルマで戦った。7年間も。
「もっと教えておくれ!」
ンバクは興味津々である。
「眠くなってきたな。部屋からたばこを持ってこい。それと母さんにもうタクシーは出てるか聞いとくれ」
父は、子が命令を聞いて走っていくのを見て満足げに頷いていた。まるで戦場の司令官か少佐のようである。
小説のコーナーはすぐに終わって、ニュースの時間になった。マンダレーは国の情勢を知りたかった。とりわけ戦死した人々の補償問題については躍起になる。一時、政府が彼らの面倒を見たことは救いであった。それまで苦悩と貧窮の人生を生きてきた人々である。マンダレーも何ももらっていなかった。ンバクが彼の補償であったかもしれない。彼は帰国してすぐお嫁さんをもらった。しわしわの笑顔はえくぼを作り輝いていた。
*1:1902年から1960年まで、イギリスが東アフリカの植民地に設置した軍事組織。植民地の治安維持と二度の世界大戦に用いられた。