経験の副作用を知る

どうもシャオムです。

プロ野球のキャンプで、ベテラン選手よりも若手の方がたくさん練習しているのはなぜでしょうか?それは、もちろん体力の問題もありますが、一番はやはり、ベテラン選手は経験で技術を補えるからだと思います。若手は経験がない分練習をして、来る公式戦に向けて最善の準備をする必要があります。

この社会は、何かと経験がものを言う社会です。若手社員は経験がないというだけで失敗して怒られますし、ベテランよりも多く働かなければいけないという空気があります。

今回は、そんな経験万能社会の欠陥を考えてみたいと思います。経験に頼ることの負の影響は、どんなものでしょうか。

それは、経験をすればするほど、学ぶモチベーションは下がることです。一般的な就職活動を考えてみてください。新卒の採用において重視されるのは「経験」よりも「ポテンシャル」というのはよく言われることです。現時点で持っている能力や学歴、コミュニケーション能力などが主な基準になります。一方、40歳の人が転職活動をしようとすると、当たり前ですが、重要なのは「経験」になります。つまり、年齢が上がるに従って、経験で評価されるようになっていくということです。

これは裏を返せば、経験を積めば積むほど、新しいことを学ぶ動機はなくなっていくということです。経験を多く持っている人は、今から何を学ぼうとしているかではなく、今までの経験で評価されます。もはや学ぶ姿勢は、報酬や地位に関係ありませんから、重要なことではなくなります。

このような社会では、どんなことが起こるでしょうか。経験だけに頼って生きるということは、過去の成功や失敗に基づいて判断するということです。すると、以前うまくいっていた方法でうまくいかなくなったとき、つまり環境が変わったときに、力を発揮できないことになります。学ぶのをやめるということは、変化に適応できなくなるということです。これが、経験を得ることの最大の副作用です。


「学び続ける人に」や「生涯学習」という言葉は教育でよく語られます。もちろん、これからの時代、学び続けることが大切なのは真実でしょう。しかし、私たちは学び続けようと思ってもなかなか学び続けられるものでもありません。生涯学習社会を実現するためには、経験が評価される割合を減らし、学びが評価される割合を増やさなければなりません。「経験は実力だが、学びは実力ではない」というのもまた真実だと思いますが、社会が学びを評価しないのではあれば、生涯学習社会は難しいでしょう。教育の分野は「どうすれば生徒が学び続けられるか」という視点で話をしますが、本当に生涯学習社会をつくるには「どうすれば学ばざるをえない社会になるか」という視点が必要です。


経験の副作用から生涯学習まで話が及びましたが、いかがだったでしょうか。「学び」と「経験」の関係は、意外と重要かもしれませんね。

f:id:honmadesukate:20200710151723j:plain