カナダと日本のストリートミュージシャン

どうもシャオムです。

梅田駅の周辺を歩いていると、いつも決まった場所にストリートミュージシャンの方がいて、歌を歌っています。演奏を聞いている人もけっこういて、ちょっとした人の集まりができています。今回は、そんなストリートミュージシャンにまつわる話です。

難波の方にはあまり行かないのでよくわからないのですが、大阪でストリートミュージシャンを見かけるのは、梅田の一部のエリアのみです。あとは、ときどき駅や大きめの施設に、誰でも弾けるピアノが置いてあるところがあります。ちょっと通りかかったときに音楽を奏でる人がいれば、気分が上がったり心安らいだりするものです。ただ、僕の印象では、梅田の街の喧噪は、音楽を聴くにはちょっとごちゃごちゃしすぎています。

ふと、じゃあどんな場所で音楽が聴けたら嬉しいかなあ、と考えてみました。たとえば、大阪城公園万博記念公園大阪城公園の散歩エリアでサックスとか吹いている人がいたら、きっと立ち止まって聞きます。あとは、京都の鴨川とか、きれいな河川敷です。河原でトランペットの練習をしている人などはときどき見かけますが、その場にいる人に向けて演奏している人は見たことがありません。

公園や河原にミュージシャンがいない理由は、許可が下りていないからです。道路にしても公園にしても、公共の場なので、演奏をしたければ管理者や自治体に許可を取る必要があります。ミュージシャンを見かけないということは、許可を取るのが難しいということでしょう。たしかに、静かな公園で音楽なんてやられたらうるさくてたまらないという人もいるでしょうから、許可が下りないのはしょうがないことです。

「公園や河原で音楽を聴きたい」という僕の発想はどこから来ているかというと、カナダのバンクーバーに留学していたときの街の風景です。バンクーバーではいろんな場所に、ストリートミュージシャンがいます。現地では "busker" と呼ばれています。街の広い交差点にいることもあれば、公園にもいます。僕が一番好きなのは、English Bay Beach や Graville Island の港など、海が見える場所にいるミュージシャンたちです。ビーチは広いので、何人かで楽器を持ち込んでバンドをやっているグループもありました。バンクーバーでは、それぞれが場所の景観を崩さないようバランスを取りながら、その場に合った音楽をやっているという印象でした。

バンクーバーの busker について改めて調べてみると、もちろん彼らも許可を取ることが必要になっています。しかし、日本と大きく違うのは、バンクーバーの市のサイトに、申請手続きの方法が明確に記されています。つまり、ストリート音楽がそれほど市民に定着している文化であり、市としてそれを管理しながらも奨励しているということがわかります。実際に busker たちは、街の人々を大いに楽しませています。

大阪とバンクーバーでこうも状況が違うのは、人々にとっての音楽の価値が異なるからでしょう。日本でもお店では音楽が流れていて、街で音楽を聴くことはよくあります。しかし、おそらく日本では、大衆にとっての音楽とは「流行っている音楽」であり、イヤホンから流れる音楽、それと同じものが街で流れている音楽、それを真似てカラオケで歌う音楽、なのではないでしょうか。それに比べると、バンクーバーの人々にとっては、街で知らない誰かが奏でる音楽もまた音楽であり、生活の中に確実に根付いています。日本にも公園で音楽をやりたい人も聞きたい人もたくさんいるでしょうが、現状ではそれはマイノリティであって、「こんなところで歌うんだ」と思う人の方が多いと思います。だれも歌っていない場所で歌い始めるのは、日本人にとってかなり高いハードルを越えなければなりません。

僕のように街で聞く音楽が好きな人からすれば、もっとストリート音楽が増えてほしいでしょう。制度や文化はともかく、名もない人たちの自由な表現みたいなものがあふれる世の中になれば、楽しいだろうなあと思います。

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