的外れな発言に対して何と返すか

どうもシャオムです。

塾で教えていて、非常によく悩むのが、「的外れなことを言った子どもに何と返すか」という問題です。たとえば、次のような会話です。

 

僕「3分の1と4分の1はどっちが大きい?」

生徒「3分の1」

僕「なんで?」

生徒「3は4より小さいから、3分の1は4分の1より大きい」

 

このようなやりとりは、日常的によくあります。良い例かどうかわかりませんが、この生徒の説明はやや的外れです。この場合、生徒はおそらく、分母が小さい方が大きいと教わって、それを記憶しているのでしょう。「分子が同じなら、分母が小さい方が大きい」という法則を拠り所としています。これは歴然とした正しい事実なので、この生徒はそんなに間違えてはいません。ただ、僕の質問に対する模範的な答えとは、たとえば、「1枚のピザを3等分したときと4等分したときとでは、3等分したときの方が、1切れは大きくなる」という感じのものです。ようするに、分数とは何かということを理解してほしいのですね。

ここからが本題ですが、子どもが的外れな答えをしたときに、どう対処するかです。子どもでなくとも、誰かと話していて、明らかに相手が間違えているときにどう言葉をかけるかは、割と難しい問題ではないでしょうか。

教える側として心がけなければならないのは、子どもの意見を尊重すること、そして極力否定しないことです。言い換えれば、子どもの考えや発言をもとにして、学びを進めていく、作っていくという発想です。だから、子どもが間違えているときの返し方に非常に気を遣わなければなりませんし、工夫や経験が必要になってきます。

しかし、今回僕が考えたいのは、「違うものは違う」という点です。「あなたは論理的か、それとも感情的か」という質問がよくありますが、僕はかなり論理にこだわるタイプなので、子どもの発する言葉から、その子がその問題に対してどういう解き方をして、なぜその答えになっているのかという背景を、察知するのが得意です。そんな僕からすると、いくら子どもの意見を尊重するといっても、間違いは間違いなのです。それに比べて、人の気持ちや細かい感情の動きを感じ取るのは、もともと得意ではないので、子どもが間違えたときは、よく普通に「違う」と言ってしまいます。はじめのころは、もう少しオブラートに包もうとしていたのですが、だんだん、違うものは違うと言わなければと思うようになりました。

先ほどの分数の問題で、仮に子どもが4分の1の方が大きいと答えたとします。これは絶対に間違っているので、違うと言わざるを得ません。ここで重要なのは、「3分の1は4分の1より大きいことは、崩れざる真実である。ただし、その子がなぜ4分の1の方が大きいと思うのかというところに、その子が分数を理解していく上での急所がある」ということです。難しい言い方をしていますが、要するに、答えは間違っている。間違っているけれども、その子がそう考える理由や背景は、尊重されるべきであり、それをどんどんアップデートしていくことによって学びが進んでいくということです。

ディベートのように、「あなたの意見を言いなさい」というような問題に対しては、たしかに「みんなの意見を否定しない」べきかもしれません。しかし、科学など、真理とされているものや人間が決めたことを学習するという作業においては、1つの答えに正・誤の判定が下されます。大事なことはその判定を曖昧にすることではなく、厳密に判定したうえで、子どもが事実を正しく理解するための障害となっている物を取り除くことです。そのためには、自ずと子どもの頭の中を探っていかなければなりませんし、その子の発想や考え方に着目せざるをえません。「答えは否定しても、その人を否定しない」という姿勢こそ、もっとも重要なのでばないでしょうか。

 

f:id:honmadesukate:20200710151723j:plain