磨くは一生-学びつづける教師に-

「先生、どうやったら数学できるようになりますか?」

 もともと数学が得意だった私にとって、この質問は最大の難問だった。どうすれば子どもの気持ちがわかるだろうか。悩む私に、ある先輩は、「自分が苦手な分野を思い浮かべて」と。たしかに、苦手なことに取り組むのは大変だ。

 そもそも、何のために、その子に数学を勉強してほしいのか。それは一つには、数学を通して、粘り強さ、そして学ぶ姿勢を身に付けてほしいからだ。そう考えるならば、その子は「どうやったらできるようになる」と問えている時点で、すでに誠実で純粋な学び手である。

 教師が教えるべきことは何だろうか。数学の急所やコツを教えることも重要。しかし、最も示すべきは、学ぶ姿勢ではないか。教師がどこまでも自身の課題に向き合い、成長し続けていく。数学という学問を深め続けていく。その姿こそ、数学が苦手な子にとっての手本である。

 私にとっての「数学が苦手な子」は、「共に課題に向かう人」へと変わった。教育実習の最終日、生徒たちからもらったメッセージカードには、「わかりやすい授業をありがとう」と。その真心に感謝し、将来は、「先生となら数学を勉強できる」と言われる教師を目指したい。

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