「何のために勉強するのか」を聞かれた日

どうもシャオムです。

子どもたちが入学してから2週間が過ぎ、授業が始まりました。僕にとっても初めての授業。いろいろな気持ちを抱いて、初回、2回目と授業をしていきました。そんな中、あるクラスで、授業が終わったあとに質問をしにきた子がいました。

「何のために勉強すると思いますか?」

僕の口から最初に出た言葉は、「おおぉああー」でした。口から出た言葉というより体の底から出た唸りとでもいうような何かでした。

僕にとって、この「何のために勉強するか」という問題は、人生最大のテーマといっても過言ではないものです。このブログを何度も読んでくださっている方であれば、僕が「学ぶ目的」という問題にかなりこだわっている人であることがわかっていただけると思います。そういうわけで、教師になるにあたっても、勉強の目的について子どもたちにどう伝えるかは、大きなテーマだったわけです。

もし、この質問を受けたのが3年後だったなら、僕は「よしきた!」と思って得意げに語っていたかもしれません。僕の「おおぉああー」という唸りは、「こんな早くにそれを聞かれるとは思ってなかった」という偽らざる気持ちの表れでした。

「なんで勉強なんかせなあかんねん」という質問と、「何のために勉強すると思いますか」という質問は、その根本において、まったく別の質問です。前者の質問は、「私が勉強しないといけない理由を、教師であるあなたは説得力を持って説明できるのか」という、いわゆる教師を試す意図を持った質問です。また、教師を困らせることによって、勉強しないことを正当化するための質問なのかもしれません。一方、後者の質問は、「何のために勉強するのか、私は悩んでいるけれど、答えは出ないから、先生の意見を聞きたい」という純粋な疑問です。今回、その子が僕にたずねてきた質問は、完全に後者でした。前者の質問なら、今までも何度かされてきました。しかし、後者は初めてでした。いわば、教師生活ひと月にも満たない僕が、いきなり真剣勝負を挑まれたということなのです。正直なところ、準備不足といえばそうでした。

僕はその子に対して、自分の思う勉強の目的を、一言二言しゃべりましたが、まだ自分で納得がいくほど答えられていません。授業の合間の休み時間では、到底完結しない話です。これから一年かけて、その子と語り合っていきたいと思っています。あの質問をされて数日、答えられることよりも、一緒に考えてあげることの方が大切かもしれないと思うようになりました。仮に放っておいたとしても、その子は自分で熱心に勉強し、立派に育っていくイメージしか湧きません。しかし、本気には誠実で応えなければいけない。純粋には真心で応えなければいけない。そう心に決めて臨みたいと思います。1人の中学1年生が発したその質問は、まだ始まったばかりで雑然とした僕の教師生活に、一筋の光を投げかけたのでした。

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